第1回【前編】ワイン王子 大西タカユキさんの「今夜はワインで映画に乾杯」

2014年05月21日 10時04分

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ある時は個性ある名脇役として、ある時はストーリーの鍵を握る陰の主役として、数々の映画に登場してきたワイン。
この連載では、ワインプロデューサーの大西タカユキさんが、名画や話題作の“あのシーン”を振り返りつつ、ワインの魅力を語ります。
ワインを知ることで、映画がもっともっと味わい深くなるはず!

【第1回】『失楽園』×シャトー・マルゴー ~前篇~


映画の世界観を象徴する、官能的な「ワインの女王」

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こんにちは!ワインプロデューサーの大西 タカユキです。ぼくが最近ハマっているのが映画! 映画を観ているとよくワインが出てくるんですよね!職業柄、血眼になってワインの銘柄をチェックしてしまいます(笑)。でも、よく観察してみるとその映画になぜそのワインが出てくるのかということには、ちゃんと意味があるんですよ。
1997年に公開された、不倫をテーマにした有名な映画『失楽園』にもワインが出てきます。役所広司演じる出版社に勤める久木は、黒木瞳演じる書道の講師・凛子という美人妻に出逢います。ふたりは次第に不倫の関係となって燃え上がり、家庭や社会の地位を捨ててまで愛を追い求めるように……。そして永遠の愛を実現する方法としてたどり着いたのが「死」。ふたりの心中シーンに“本日のワイン”が登場します。
その心中シーンは壮絶そのもの。なんと、赤ワインに毒を入れて久木がそれを口に含み、凛子に口移しで飲ませるというもの。この赤ワインこそ、フランスワインの最高峰である5大シャトーのひとつ「シャトー・マルゴー」。
ふたりの「究極の不純な純愛」を貫いた心中シーンで、「シャトー・マルゴー」が映るのはたったの数秒! この「究極」のシーンで「シャトー・マルゴー」が選ばれたのは、人生の最期に飲むにふさわしい「究極」の赤ワインとして申し分ない歴史を持ったワインだったからです。
さらに、「シャトー・マルゴー」は「ワインの女王」と呼ばれ、どことなく『失楽園』にも似た官能的な雰囲気を醸し出す美しいワインです。5大シャトーの中でもあえて「シャトー・マルゴー」が選ばれた理由はそのあたりにあるのでしょう。
ちなみに、ぼくはこのコラムを書くにあたり、カフェに自分のPCを持ち込んでもう一度『失楽園』を観たのですが、まわりの人から「何観てるの?」的な視線が……(笑)。


『失楽園』

過激なセックス描写で話題を呼んだ、渡辺淳一のベストセラー小説を映画化。ダブル不倫を表す“失楽園”という言葉が、流行語大賞にも選ばれるほどのブームを呼んだ作品。
(1997年製作 監督:森田芳光 出演:役所広司、黒木瞳、木村佳乃、寺尾聡ほか DVD発売元・販売元:KADOKAWA 角川書店 DVD価格:4700円+税)

 

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